2021年02月26日
コロナ禍が続く中、企業様からハラスメント研修をやりたいけれども集合研修は不安なので、他にどのような実施方法があるかというご相談をたくさんお受けしております。 そこで、今回はオンラインを使用した場合の研修実施方法のご紹介と、それぞれのメリット・デメリットについて、ご紹介いたします。
1.研修方法とメリット・デメリットの概要
下の表にあるのは、すべて私が実際にやったことのある研修方法です。その体験から感じたことをベースに(若干主観が入るかもしれませんが)メリット・デメリットをまとめました。
実施方法 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
①集合研修 | 講師、受講者が会議室等に集まって実施する | ・双方向のやり取り◎ ・環境的に集中しやすい |
・受講者間で討議△(コロナ禍で制限される) ・時間、場所の融通はきかない |
②オンライン研修 (一人一台PC) |
Zoom等のWEB会議システムを使用し、受講者が一人一台のパソコンから参加する | ・双方向のやり取り◎ ・受講者間で討議◎ (ブレイクアウトルーム) ・講師次第で集中できる ・どこからでも参加可能 |
・一人一台PCがないと実施できない ・事務局サポートが必要 ・時間の融通はきかない |
③オンライン研修 (受講者は集合) |
Zoom等のWEB会議システムを使用し、受講者は会議室等に集まって参加する | ・講師がコロナを持ち込むリスクを防げる | ・双方向のやり取り△ ・受講者間で討議△(コロナ禍で制限される) ・双方向のやり取りが減る分集中力維持は難しい ・時間、場所の融通はきかない |
④オンライン研修 (集合&一人参加) |
上記の「一人一台PC」・「受講者は集合」の混合型 | ・講師がコロナを持ち込むリスクを防げる ・どこからでも参加可能 |
・双方向のやり取り△ ・一人参加者同士でブレイクアウトルームは出来るが、集合参加者もいるため制限を受ける ・双方向のやり取りが減る分集中力維持は難しい ・時間の融通はきかない |
⑤研修動画配信 | 事前に録画された講師の話を、受講者が視聴する | ・いつでも受講可能 ・どこからでも参加可能 |
・双方向のやり取り× ・受講者間で討議× ・集中力維持は困難 |
2.ハラスメント研修における双方向性・討議の意義
1の表の中で「双方向性」、受講者同士の「討議」という切り口で評価をしていますが、この2つはハラスメント研修において、とても大切です。
そこで、各実施方法のメリット・デメリットの詳細を説明する前に、「双方向性」、「討議」の意義をお話したいと思います。
(1)双方向性について
ハラスメント研修には知識習得の部分もありますが、最終的な目標は「ハラスメント的な言動をしない」という行動変容です。そのためには今の自分がどうなのかを自覚してもらい、どのように言動を変える必要があるかを考えてもらわないといけません。そのようなアクションを起こしてもらうためには、講師が一方的に話をしてはダメで、自分で考え、それに対してフィードバックをもらうようなワークが必須です。つまり、双方向型の研修である必要があります。
(2)受講者同士の討議について
講師がいくら「○○のような言動はハラスメントになり、許されません」と力説をしても、受講者の中には「講師が言っていることは机上の空論だ。現場では、○○のような言動をしないと指導なんてできない」と思う方もいます。しかし、ワークの中で同じ管理職の立場の方が「○○は当然パワハラになる。そのような言動を行うなんてとんでもない。」と仰ると、講師が言う場合の何倍も胸に突き刺さることがあるようです。「自分が考えていることが、当たり前ではないのだ」ということに気づいてもらうためにも、受講者同士の討議は大切です。
3.各実施方法のメリット・デメリット詳細説明
①集合研修
時間や場所の縛りはあるものの、講師と受講者、また受講者同士のコミュニケーションがとりやすく、従来は最も効果がある研修方法だったと思います。しかし、コロナ禍で集合自体がNGの企業様も多かったり、OKの企業様でも受講者間の討議等のワークは出来るだけ短時間・少人数でという制限があったりして、実施が難しくなっています。
②オンライン研修(一人一台PC)
集合研修のように気軽に会話ができるわけではありませんが、代わりにチャットや投票機能等のオンライン機能を利用したコミュニケーションがとれます。名前を出さずにコメントをつける等、匿名でのコミュニケーションも可能で、間違えたら恥ずかしい等の緊張感なく受講できます。一方的な講義スタイルの講師だと集中するのが難しいですが、ワークをふんだんに取り入れた研修であれば、集中して受講できると思います。
③オンライン研修(受講者は集合)
口頭で発表してもらったり質問を受けたりは可能ですが、②で書いたようなチャットや投票機能等のオンライン機能を利用したコミュニケーションをとることはできません。また①で書いたように受講者間の討議もコロナ対策上難しい場合、講義部分が多くなりがちです。さらに、講師が目の前にいないため、受講者の参加意識は低くなりがちで、メリットは少ないように思います。 ただ、受講者間の討議をある程度やらせていただける場合は、グループに分かれて対抗戦の要素を取り入れるなどして、参加意識を高める工夫は出来そうです。
④オンライン研修(集合&一人参加)
集合か一人参加か、自分が出やすい方を選択できるため柔軟性は高いですが、あとは③と同じで、やはりメリットは少ないように思います。
⑤研修動画配信
いつでも、どこからでも受講可能という面で、柔軟性は非常に高いです。ただ、自由度が大きい分、受講者の意欲が高くないと、なかなか受講してもらえなかったり、再生しながらメール対応など他事をやったり、などということも起こりがちです。自己啓発教育には向いていると思われますが、受講意欲の高い人が少ないハラスメント研修に向いていないかもしれません。ただ、ハラスメント研修の中の知識習得部分を事前に動画で見ていただき、リアルタイムの研修時間を短くするという活用の仕方は有効だと思います。
4.まとめ
ここまでの話をまとめると、もし一人一台パソコンを準備できる環境であれば、②オンライン研修(一人一台PC)が一番効果的なハラスメント研修が実施できると思います。もしくは、広くて換気も十分にできる研修会場が確保できるのであれば、コロナ感染対策をしっかりとした上で、短時間のワークを入れた①集合研修を行うという選択もあります。③~⑤については、どうしても講義と個人ワークが主体となってしまうので、フィードバックをどのように行うか(レポート提出等)を、工夫する必要がありそうです。